「ニュース雑感」 第109回を更新しました。
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乱立する司法判断で国が袋小路に追い込まれている。諫早湾の干拓事業をめぐり今回、福岡高裁の棄却決定により、国は諫早湾を開門しない限り、6月12日分以降一日につき49万円の制裁金を漁業者に支払わなければならない。
だが、開門してしまうと干拓した農地に塩害が生じてしまう。塩害の対策工事は、地元住民の反対運動に遭って着工のメドさえ立っていない状況である。
現下の混乱はなぜ起きたのだろうか。
2010年12月、「開門」を命じた福岡高裁の判決について、菅直人首相(当時)は地元の意向を無視して上告をせず確定させてしまった。これが地元住民の反感を買ったことは言うまでもない。開門の利点より開門した場合の被害がはるかに大きいことが、その後の調査で明らかになった。開門による被害を過小評価した司法・政治による判断ミスであったことは間違いのない事実だろう。
長崎地裁は2013年11月、開門反対派の訴えを認め、開門を差し止める仮処分を下し、6月4日には開門した場合、1日49万円の制裁金を地元住民に支払うよう命じる間接強制を決定した。年間で算出した場合1億7千万円もの公金を支出することになる。
地元住民は「開門しないことを前提に、話し合いの場を」と求めるが、開門派漁業者も要求を撤回する意思はない。菅直人氏の誤った政治判断が、地元を二分してしまう災禍を招いている。
政治家が災禍に巻き込み、巻き込まれる側はいつの世も民衆である。
(谷田 洋平)
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