【トカゲのしっぽ切り】

　柔道女子日本代表監督・園田氏に対する女子選手１５名の告発が表面化した。
練習中に殴られたり蹴られたりした精神的肉体的苦痛の限界を超えたすえの行動yだったが、この事実を柔道連盟が４か月間もの間隠ぺいしていたことも明らかになった。
　スポーツ界には往々にして指導という名の体罰や暴力がつきまとってきた。私も野球をしていた時代、監督からの指導と称した暴力を受けた経験がある。軍隊の名残のある昭和の時代であれば、世の中全体が成長のための精神論だけで教えていたことは誰も否定できないだろう。今の時代ではまさしく前近代的な指導方法なのだが。
　その前近代的な指導が、柔道や大阪桜宮高校バスケットボール部監督による選手への体罰が今でも行われていることに腹が立ってならない。大阪桜宮高校に至っては将来ある若者が命を絶っているのだ。
　選手にとって、監督や指導者は絶対的な存在である。言われたことには絶対服従、刃向ったら外される恐怖がある。だから従うしかない。それを良いことに指導という名の体罰や暴力がエスカレートし

「何のために指導しているのか」
「誰のために指導しているのか」

が分からない状況になってしまい、指導者自身の自己満足のためだけに行われているのではないか。

　また、今回の柔道女子日本代表のケースでは柔道連盟が４か月間も事実を隠ぺいしすべて内部で穏便に済ませようとした体質も明らかになっている。桜宮高校バスケットボール部のケースでも同様のことが起きているが、関係者が一様に「知らなかった」か「事実の把握に努めている最中でした」とか「関係者を集め事態の収束を図るつもりでした」と口を揃える。つまりは、なかったこととしてもみ消したいだけなのだ。
日本のスポーツ界は、いまだに古い体質の精神論者がいまだに蔓延り、既得権ばかりを振りかざし、権力で締め付けようとする。
　柔道連盟の記者会見を見ても「心から申し訳ない」と思い、スポーツを愛する国民に納得のいく説明をしようとする姿勢が感じられない。文部科学大臣に事態の説明と謝罪にJOCが出向いた際の映像を見ていても、おざなりの姿勢としか見えない。
　隠していたことが表面化し、社会の風当たりが想像もしていなかったほど強烈だったことに驚き、当事者である園田氏の首を切らざるを得なくなり、園田氏に記者会見をさせた。そこに柔道連盟は同席していない。まさにトカゲのしっぽ切りで終息させようとしている思惑が伝わってくる。

JOCや柔道連盟のお歴々は、自ら（個人）自己保身を考える前に、本来のスポーツの目的とは何かを考え直すべきだろう。
こんな愚行の国に、オリンピック招致など恥ずかしい。

（佐々木　政幸）